[Essay] 恋するザンビアン — 僕がアフリカにいるわけ
今回はザンビア交換留学中の石松さんからのエッセイとなります。お楽しみください。
初めまして、石松悠斗と申します。 私は東京外国語大学国際社会学部アフリカ地域専攻3年在籍中で、昨年9月からザンビア大学に1年間の交換派遣留学を行っています。 ザンビアと言われてパッと地理が思い浮かんだ方は中々すごいかも。 アフリカ南部に位置するこの内陸国は、日本のおよそ2倍の面積とおよそ10分の1の人口を併せ持つ、島根県ほどの経済規模の国です。 といっても中々イメージしにくいですかね。 昨年6月のサッカーW杯では、本番直前の練習試合で日本代表と対戦したことで話題になり、10月24日には独立50周年を迎え、それから1週間も経たずに現職の大統領が死去しました。 そしてつい最近、選挙を経て新大統領が選出されました。 社会が駆け足で動いている。そんな実感が持てる国です。 今回は、留学を決めた経緯をはじめ、私の留学地であるザンビアは首都・ルサカの様子などをお話させていただきます。
留学を志したきっかけ
先述した通り、筆者は東京外大でアフリカ地域を専攻しています。 アフリカの地域研究や社会学を卒論のテーマとしたいという気持ちは以前から強く、 実際に現地で生活して見聞を広めるだけでなく、現地の大学で学べるという機会は非常に魅力的だったのが、留学を考え出したきっかけでした。 地域研究や社会学で実際に研究対象の地域に入って行くというのはよく用いられる手法で、 実際にフィールドワークをするというわけではなくとも現地での生活を通して新たな視点を取り入れることができると思ったのです。 加えて、途上国では近年、身の回りの問題解決を通して事業を発展させている現地のローカルな起業家たちが注目されていることを大学の講義の中で知り、文字通り開発の最前線にいる人間、そして社会に触れたいという気持ちが強くなったというのもあります。
そんな中で、2014年度から新たに大学間協定が締結されたザンビア大学への留学を志願しました。 アフリカ地域専攻といっても、志願した当時はザンビアという国がどういう場所なのか、詳しいことは全く知りませんでした。文面の情報や映像、グーグルマップなんかをネットで漁ってもイメージは余り湧かず、出国が近づくにつれて謎の恐怖感だけ増幅していった記憶があります(笑)。
入国後
そんなこんなでザンビアに入国してからもう5か月が経過しました。 社会情勢としては先に書いた通り、独立50周年からの大統領死去、そして新大統領選出という一大事だらけで、留学中にこうしたことに立ち会えたのは率直にラッキーだったなと思います。 独立50周年、国を挙げてのお祭り騒ぎで盛り上がった数日後には国中が沈みましたからね。物凄い落差に驚かされました。
(大統領選挙でテレビ演説に見入る学生の図) そんな中にあっても治安は近隣諸国の話を聞く限りでは異様なほどに良いです。 大統領選挙は極めて平穏無事に行われ、アフリカの国々でありがちな選挙結果を巡ってのゴタゴタもありませんでした。与党候補がごく僅差で第一野党の候補をかわしての辛勝であったにも関わらず、です。これは本当に評価されるべきことだと思います。 ザンビア人は大まかに言えば明るく、気丈に接してくれる人が多い印象です。平和という事を誇りに思っている人も多い。当然例外もいますが。
学生生活
大学生活は順調で、開発学系の講義を中心に取っています。こうした種類の講義では何かギラギラした学生がやたらと多く、割と頻繁に妙なビジネス話を持ち掛けられます。 大学を卒業したとしても、失業率が高いザンビアでは職にありつける人材が限られており、むしろ自分から事業を立ち上げてやろうとする気概のある学生が一定数存在するというのは明るい話題です。
学生が学内環境の改善などを求めて(時には暴力的な)デモを起こしたりするというのも中々味わえない経験です。デモ隊鎮圧のため警察隊が使用した催涙ガスにやられてさすがに身の危険を感じたこともありましたが…。
そして注目すべきはネット環境。大学内ではWi-Fi環境が整っており、学生は無料でこれを利用することができます。 深夜になってもBlackBerryやノートパソコンにかじりついている学生の姿は正に日本のそれと同じです。 ネット環境の重要性を理解し、Wi-Fi実装までできている大学の先見性は素晴らしいと思いますし、その効果は着実に出てくるでしょう。
ルサカの街並み・暮らし
筆者が生活しているのはザンビアの首都・ルサカ。首都と言ってもオフィスビルが立ち並び、といった感じではなく、広大な土地に低い建物が集積しているイメージです。 買い物はもっぱら徒歩圏内のショッピングモールで。ルサカ市内だけで大型モールが4軒あり、その内1軒は大学の敷地内にオープンしました。ちょっとスケールが大きすぎてついて行けないです。
主な交通手段は自動車。走っている車のほとんどが日本車で、交通渋滞が頻発します。渋滞を遅刻の言い訳にすることもしばしば。 筆者自身は自動車を持っていないため、ミニバスで移動します。 ミニバスとはアフリカ諸国ではよく見られる交通手段の一つで、ワゴン車か、あるいは中型バスに乗せられる限りの乗客を全力で詰め込んでバス停間をつなぎます。 ただでさえキツキツの座席に比較的体が大きめのご婦人が座ってくるともう、やりきれない感MAXです…。
ナイトライフも充実しています。まず、大学の構内にナイトクラブがあり(!)、週末は学生が集まってバカ騒ぎを繰り広げます。 ナイトクラブ毎に特徴があり、白人やインド系などが多く集まるクラブがある一方で、ローカル感満載のクラブもあり、バラエティに富んでいます。 筆者は体質上お酒をほぼ口にしないのですが、地元民の雰囲気を直に味わえるという事もあり、時々足を運びます。
…と駆け足で説明しましたが、これは首都であるルサカでのお話。地方部に行くとまだまだ生活インフラが不十分な地域も多く、首都と地方間の大きな格差を感じます。大学はルサカ生まれ・ルサカ育ちの学生が多く、彼らは「シティーボーイ」と半ば揶揄されたりもします。
まとめ
現地に入ってからの約5か月を振り返ると、やはり濃い学びが多かったなあという印象です。近年広がりを見せているキリスト教系新興宗教のミサなど、大学の机上で学んだことを実際に目の当たりにしたときなど、居ても立っても居られないほどの興奮を覚えました。
数日間の停電や断水などもろともしない心のタフさも得られましたし、ザンビア愛、ひいてはアフリカ愛も深まりました。同時に日本愛も。 今、留学に行くかどうか迷っている方へ。絶対に行った方がいい!!と自信を持っておすすめします。想像以上に様々な学びがあります。
アフリカは留学地としてはまだまだメジャーとは言えない選択肢ではありますが、これからどんどん広がっていくことを大いに期待しています。 最後まで読んでくださってありがとうございました。
【コメント】 今回は、ザンビアに交換留学に行っている石松悠斗さんへのインタビューでした。日本に住んでいながらもザンビアに行くとなると生活のギャップに驚かれたことでしょう。ただ、本人も様々な学びを得たとおっしゃっている通り、アフリカでは学問以上に政治・経済・文化への気づきがあると思います。このように記事を読んでいる私たちも知らない生の情報によって視野を広げられる点で、留学によって得られるものはたくさんあるし、それを提供することができ、自分の可能性を広げられると思います。 記事担当者 萩谷昌平
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