百闻不如一见 - JGSweekly #15
みなさんこんにちは。今週のJGS Weeklyは中国、北京の清華大学です。清華大学は北京大学と並んで中国のトップ2に君臨する超名門大学です。法律など文系分野に強い北京大学に対し、清華大学は理系分野に強い大学です。今回は清華大学環境学院環境管理政策研究所で研究をされている松原喬さんにお話を伺いました。
Q1. 中国で環境について研究することを決めた理由はなんですか?
将来は日本の技術で世界の環境・エネルギー問題に貢献する仕事がしたいと思っていました。中国は世界でもっとも深刻かつ多様な環境問題に直面しており、それに新しい技術やソリューションが世界各国の企業から持ち込まれています。そうした「環境ビジネスの実験場」のような中国に留学して、日本企業がそこでそのように戦っていくのかについて研究をしたいと考え、中国への留学を決めました。清華大学は環境分野では中国トップの大学であり、世界のトップ大学との交流も盛んです。また、政府や企業との共同研究を行われており、多くの環境分野の人材と知り合えると考えたため、同大学を選びました。
Q2. 環境問題を抱えているからこそ、「実験場」として先進的な研究が行えるのですね。環境・エネルギー関係の職業を考えていらっしゃるようですが、現地では就職活動はどのようにされていたのでしょうか。
卒業後に現地採用となると2年の就労経験が必要になる(中国ならではの裏ルートは存在するが)ことと、現地のキャリアフォーラムなどでは日本企業は主に中国人学生を探している場合が多いので、中国にいる間は就職活動はあまりしやすいとは言えません。ただ、中国語が話せる人材、海外に向けた積極性の強い学生に対するニーズは高く、日本国内での就職活動では29歳という年齢にもかかわらずオファーをいただける企業は多かったですね。企業側でも最大のマーケットである中国市場に拠点をつくったものの現地スタッフとの溝を埋められる日本人スタッフや、中国という厳しい生活環境に敢えて行きたいという社員が不足しているため、中国に対して前向きな姿勢を持った社員は企業にとっても貴重な存在であるようです。
Q3. やはり中国で学んだ経験を通じて中国人とのコミュニケーションに慣れているというのは企業の側からみても欲しい人材ということになるのですね。北京にいらっしゃるときは、現地で日本人と関わる機会などはありましたか?
北京では多くの日本人の方と接する機会がありました。外交官の方、大企業のトップで働いていらっしゃる方、飲食店を経営されている方や小学校の先生方など、日本ではなかなか接する機会のなかった方々とも現地で趣味や県人会、出身校の同窓会支部など様々な機会を通じて親交を深めることができました。見知らぬ人であっても、海外で出会えば「同胞」です。北京での生活を通じて知り合った多くの社会人方、先輩方の存在は自分の人生にとって非常に大事な存在になると思います。
Q4. たしかに、海外で日本人と出会うと全く見知らぬ人でも親近感が湧くというか、日本で初対面を迎えるより親しくなれることはありますよね。北京では日本人同士のつながりが強そうですね。ただ、海外にいる以上、日本人以外、要は中国人と接する機会は多いと思いますが、中国特有の文化を感じた経験はありましたか?
中国人は非常に柔軟で合理的です。日本人から見ればルールを守らない、自分勝手といったようにネガティブに映りますが、変化が起こった時の臨機応変な対応力や素早い行動力など日本人が学ぶべき点は多いと感じました。他にも集団として力を発揮する日本人と個の活躍が評価される場で力を発揮する中国人など、対照的な特徴も多くみられます。その分相手を尊敬する心を持って相手から謙虚に学ぼうとすれば日本人に欠けているところを多く学ぶことができる相手だと思います。
Q5. チームワークの日本人と個の中国人というのはかなり明確な特徴の違いですね。中国人から学ぶ点も見つかる中で、ご自身が自身を持てたような所はありましたか?
修士2年目からある環境学生団体の代表をしていました。その時に、自分の仕事に責任を持ってやることや苦しい状況でも変わらず逃げずに取り組むことを続けていくことで、たくさんの仲間たちから信頼され、さすが日本人だと評価してもらえたことです。相手が中国人でも何人でも、誠実さ・勤勉さ・公の精神と言った本当に大事なことは通じるし、変わらない姿勢は人の心を動かすことができるということを実感ました。そうした経験を通して自分に自信を持つことが出来ました。
Q6. 留学中に団体の運営にも関わっていたのですね。大学院での研究や団体での活動など、留学中に様々な活動をされたと思います。その中で、留学してよかったと思えること、留学でこれを得た、といえることはなんですか?
私が留学で得た一番大事なものは中国(人)のことをちゃんと知った上で好きになれたことです。今後一生を通して中国と関わる仕事をしていく中で、中国のことを本当に好きになれるか、大事に思えるか、というのはとても大きい問題となると思います。しかしそういった純粋な気持ちは一朝一夕で生まれてくるものではなく、実際に現地に住んで、良い所も悪い所も知って、たくさんの中国人との心の交流を通じて、ようやく得られるものだと思います。少なくとも自分の場合はそうでした。留学で得た知識や人脈ももちろんですが、それ以上に、中国を好きだと思える気持ちを持てたのが私の留学の一番大きな収穫です。
—実際に現地で様々な経験をして、それを通じて自らが感じることができたことというのは容易に変わるものではないですし、非常に重要なことですよね。今回は貴重なお話ありがとうございました。—
編集後記
さて、今回の記事はいかがでしたでしょうか?松原さんは今春に大学院を卒業されたということで、留学全体を通して感じたことを中心にお話いただきました。具体的な事情は中国独自のもので、感じることは人それぞれだとは思いますが、異国の地で相手から学ぶとともに、日本人としての強みを発見することなどは、留学という経験を通じて得ることができる1つの大きな収穫ではないでしょうか。 今回記事にはならなかったものの、松原さんから「現地で身につけた英語勉強法」ということでお話をいただいたので、こちらで紹介させていただきます。
“自分の憧れる人や尊敬する人を現地人の中から見つける(俳優やアニメキャラでもOK)です。そうすると知らないうちにその人の口調等を真似るようになっていき、ネイティブの表現やアクセントを自然と吸収していきます。大事なのは現地人に「成りきる」こと。あと部屋にいる間はテレビを流しておくと無意識のうちに耳が慣れてくるのでおすすめです。”
それでは次回のWeeklyもお楽しみに!!
記事担当者 米川和秀
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