ソルトレイクシティで学ぶ,環境経済学? - JGSweekly #14
Q1.初めに簡単な自己紹介をお願いします。
初めまして。現在アメリカ合衆国のユタ大学に通う丸山美帆(20歳)と申します。専攻は環境経済学ですが、好きな授業を取れる留学生の立場を利用して、ハイキングから都市計画まで幅広い授業を履修しています。(ソルトレイクシティで始めた新しい)趣味は街歩きと山歩きです。両方とも特別なものは何もないのですが、週末はよくふらふらと歩いています。
Q2.なぜその国、その大学、その専攻を選ばれたのですか?
大学での留学を考えたきっかけは、高校2年生の夏休みにシンガポールへ交換留学に行ったことです。10日間ほどの短い期間でしたが、そこで日本では一生体験できないような新しい文化や価値観を知ることができました。大学に入ってからも、自分が想像もつかないような景色を見たい、考えたこともないような観点を持つ人と話したい、そのような思いが強くなり留学を決めました。留学先としては、アメリカ以外の国は考えませんでした。アメリカという国は様々な人種や文化的背景を持つ人々を擁し、さらに経済大国でありながら資源の消費大国でもある。このように、新しい人と出会いながら環境と経済について考えるにはアメリカが一番だと思ったからです。ユタ大学を選んだのは、大学があるソルトレイクシティが安全で電車網の発達した町だというだけでなく、ユタ州全体が5つの国立公園を始めとする自然を有している、日本人が少ない土地であるなどの理由があります。
Q3.専攻内容について詳しくお聞かせ下さい
環境保全と経済発展という、一見相反する二つのバランスを探る環境経済学を学ぶ私にとって、ユタ大学での生活は毎日がフィールドワークです。例えば、冬のソルトレイクシティは、全米でも有数の大気汚染に悩まされています。主な原因は主力資源である石炭を用いた産業です。私も住民の一人として実際に汚染に晒され、その上で解決策を勉強することは、ただ本で読んだ事例から学ぶより現地の内情に沿った議論ができます。更に、ハイキングの授業で南ユタに位置するキャニオンランズ国立公園に行った時は、国立公園という環境保全のあり方について学ぶことができました。加えて、先学期にはマイノリティコミュニティと食料の問題に焦点を当てて研究するために、地元のコミュニティセンターでボランティアもしていました。
Q4.勉強以外の留学生活についてはどうでしたか?
私は生まれてから19年間東京で育ちました。そのため、電車は3分に1本来るのが当たり前、コンビニは徒歩圏内に2、3軒あって当たり前、という生活に慣れ親しんでいました。私は環境経済学を専攻しながら、「環境」の何たるかを全く知らなかったのです。しかしソルトレイクシティに来てからは、寮の真裏にはただ広がる山、スーパーまで徒歩と電車で片道30分と驚きの連続でした。速さも便利さもない、半ば強制的なスローライフの始まりです。しかしこの生活は私の性にあっていたようで、美しい山に囲まれて、ないものがあれば工夫して、時間に追われずのんびりと生きていく生活がとても気に入っています。
Q5.留学をして自分の中で変化したことはりますか?
今の留学生活を通して、自分の小ささと大きさを思い知りました。多くの異なる背景を持った人の中で、私は所詮その中の一人でしかなく、限られた力しか持たず、大きな変化など起こせず、私にしかできないことなんてきっとないのです。しかしその一方で、私が関わった人々から新しい考え方を得ているように、私の考え、価値観、一言が人々に影響を与えることもある。そう気づけたことが一番大きな内面の変化です。後は山が好きになり、アウトドア派になりましたね。
Q6.現地のお薦めスポットを教えて下さい。
ユタ州の南に、ゴブリンバレーという州立公園があります。キャニオンランズやアーチーズといった国立公園ももちろん素晴らしいですが、それらは国立公園の性質上ある程度キャンプやハイキングのために整備されてしまっています。一方ゴブリンバレーは、恐ろしいまでに神秘的な洞窟や、造形の美しさを感じる岩山など、圧倒的な自然のパワーを感じることができます。9月に訪れた時は、地平線まで人類の痕跡が見当たらない自然に圧巻の一言でした。
Q7.様々な経験をされた丸山さんですが、将来の夢はありますか?
具体的にこれ!という職業はまだ決めていません。それでも環境に関する仕事に就きたいとは思っています。環境を守るだけではなく、経済発展を阻害せず、その方向性を変えていく。更に経済の背後にいる、沢山の人々が分け隔てなく環境問題と向き合うお手伝いができたらいいと思います。後はせっかく英語で大学の授業を受けられるまでは上達したので、英語を生かせるような仕事だったら尚嬉しいです。
Q8.最後に読者へひとことお願いします。
よく目標のない留学に意味はないと言われますが、私は留学に行くのに崇高な動機や揺るぎない意志は必ずしも必要ないと思っています。勿論考え方は人それぞれですし、きちんとやりたいことがあって、それに最も適した場所に行くのも素晴らしいことです。しかし、見たことのない、そして日本にいたら今後一生見られないだろうものが見たい。これだけの好奇心でも十分ではないでしょうか。 留学とは勉強だけを指すのではなく、その土地で、そこの人々と共に生きることだと私は思います。私の留学生活は、私の人生で一番の大冒険であり、私という人間のあり方を大きく変えてくれました。私の体験を通して、これから留学を考えておられる方も、そうではない方も、少しでも留学に興味を持っていただけたら嬉しいです。ここまでお読みいただきありがとうございました。
編集後記
高校時代シンガポールへ留学したことが、さらに自分の未知への欲求を高めアメリカ留学を志すようになった丸山さん。自然豊かなユタ大学で、環境経済学を肌で学んでいる姿が目に浮かびます。ハイキングのようなユニークな授業が履修できるのはユタ大学ならではで、楽しそうです。また、経済の発展と、環境保護はこれからの時代ますます重要な課題になってくるでしょう。都市と地方を経験した丸山さんの将来が楽しみです。ユタ州を訪れた際はゴブリンバレーもぜひ訪れてみたいですね。
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Written by Keisuke Abe @abebe1128x